月曜日の夕立ちはつめたい

走り出した気持ちが家出して戻ってこないときに書く

記事翻訳:トランス女性の選択が社会にもたらすもの+α

 この記事は、2月28日にこの世を去った韓国の軍人であるピョン・ヒス氏の一連の出来事について取り扱っています。自死に関する話題があります。
 この件についての日本語の記事が乏しく、また存在する記事は最低限の内容しか訳されていない、またはLGBT報道ガイドラインに抵触するものばかりだったので、自分で訳してみようと思った次第です。直訳すると差別表現や蔑称に該当する単語は、日本語に訳す上で差し替えました。

 翻訳元はMBCラジオ番組『キム・ジョンベの視線集中』より、ゲストの軍人権センター所長であるイム・テフン氏へのインタビューです。ラジオ番組の話し言葉を訳しているので、日本語にする上で自然な表現や順序に置き換えたり、単語を付け足したりしています。誤訳があったらすみません(用語が難しかった……)。
 少しでも隣国のトランスパーソンを含むセクシュアルマイノリティが晒されている苦境に対して心を寄せてくださる方が増えればと、ひいてはお住まいの国の現状に目を向けて頂くための、ちょっとした縁になればと思います。

前提:彼女の強制除隊は表向きは『身体的な損傷』を理由としていますが、実際は軍におけるトランスフォビアによるものが大きな要因と考えられます。
 この元記事の中にはそれについての具体的な言及がないため、ここに記述します。当エントリではこれを前提に、彼女が置かれていた状況や裁判を起こした理由等を訳してあります。

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記事翻訳:my"BADASS"muse イ・ヨンジ

 最近、韓国での性的少数者の立場の危うさを知らせるニュースが、日本のメディアでも日本語で記事化されるようになってきた。「最近こういうの多いよねえ」ではない。残念ながらずっと起きていたが、単純に日本語になっていなかっただけだ。

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記事翻訳:とある70代の性的少数者の生と死との接し方+α

 突然だが、今回はウェブ記事を翻訳した。
 韓国の有名な、いわゆる中道左派と言われる週刊誌『時事IN』。たまに記事を読む。何人か好きな記事を書く記者がいて、そのうちのひとりがイム・ジヨン記者だ。彼女の書いた記事はここから読める。今月半ばに更新された記事に、気になるものがあった。

 今年1月、韓国である本が出版された。キム・インソンさんという71歳の女性が書いた『私の一番大切なものは私自身だった』という本だ。キムさんはベルリン在住で、同性のパートナーと暮らしているレズビアン。私も広義では同じセクマイだし、同じ病気の患者だということで興味がわいて、この記事を読んでから電子書籍で本を買った。
 邦訳の予定があるのかどうかわからないのだけど、日本でも彼女の本が読まれたらいいなと思い、思い切って記事を和訳してみた。時事INの記事は本文転載が禁止されているので翻訳はグレーかもしれないし、なんかダメだったらごめんなさいして下げるので言ってほしい。
 韓国語は日本語と文の造りが似ているけれど、やっぱりどちらかにあって、どちらかにないニュアンスというものもある。意訳も入っているけれど、大きく誤訳はないよう気をつけたつもり。よければ、続きから読んでいただきたい。

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好きだった君への果たし状

FANCY

FANCY

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 ああ、多分あいつだ。キンキンに冷えた車のハンドルを握り締めて、私は視線の先でのったりのったりと歩く、ひとりの男を注視していた。その日はいわゆる真冬がはじまったばかりで、久しぶりの冷え込みに世間は参っていた。雪国なので慣れてしまえばそんなもんだが、その冬で最初の氷点下の日というのはやっぱり特別寒く感じる。コストコで買っためちゃくちゃ暖かい毛布をぐるぐる巻きにしていても、マイカーの車内はハンドル同様キンキンに冷えていた。
 あと5分、あと5分経ったら行こう。助手席に目をやると、目玉焼きの描かれた可愛らしい封筒がぽつねんとあった。私はこれを、あの男に渡さねばならない。なんでこんなことになったんだろう。これは生まれてからというもの、一番緊張する出来事だった。